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なぜリーマンは破綻したのか (2)ファルド氏、内紛恐れ裸の王様に

 リチャード・ファルド氏にとって2008年は、ウォール街の花形からどん底へと突き落とされた年となった。1月にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムに参加し、世界のエリートたちと親交を温めていた男が、わずか9カ月後に、公聴会を終えて自身のリムジンに乗り込むまでの間、罵声を浴びせられることになったのだから。
 ファルド氏は、会社の事業にどっぷりと浸ることなくトップに登りつめた末に失脚したメリルリンチやシティグループのCEOたちとは違う。また会社の存続が危うくなるなか、趣味のブリッジに興じていた、ベアー・スターンズのCEOとも似ていない。
 ファルド氏は、16年前にCEOに就任して以来、ウォール街で最も優れた経営者とみなされ、リーマンの利益を1994年の1億1300万ドル(約99億6800万円)から2007年の42億ドルへとのばし、株価を20倍にした。
 そればかりではない。ファルド氏は職業人としての40年間をリーマンにささげた。ファルド氏が入社したのは1969年。証券会社が配達員の手を介して株券を直接やりとりする形で取引を行っていた時代だった。同氏はCP(コマーシャルペーパー)取引を手始めに、債券のトレーダーとして名を上げる。今回の危機でリーマンが住宅ローン関連の不良資産を抱えすぎたことが明らかになるまで、ファルド氏のリスク管理手腕は高く評価されていた。
 しかし80年代のリスク管理と21世紀に入ってからのリスク管理には、チェッカー(西洋碁)と3次元チェスほどの違いがある。扱う商品の複雑さも賭けられる金額も異なった。
 これはリーマンに限ったことではない。ファルド氏ら金融機関のCEOたちが最上階で会議を開いている間に下界では、統計的手法でデリバティブ(金融派生商品)などの運用を行うクオンツトレーダーが理解不可能な合成金融商品の戦略をこね上げていた。
 「ファルド氏はほとんどゼロから自らの手で築きあげた帝国を、2年足らずで崩壊させた」
格付け会社イーガン・ジョーンズ・レーティングスのイーガン社長は「最大の過ちは、債券市場で自身が活躍した時代の後にリスクというものが変質したことを理解しなかったことだ。自分と利害が一致する人の意見にしか耳を貸さなかったことも大きい」と話す。
 CEOには、リスクとリターンについて正しく判断し、それを報告してくれる優秀な部下が必要だ。残念ながら、そうした人物はファルド氏のもとを離れていった。会社の事情を知る人物によると、近年のファルド氏は孤立を深め、議論をきらって、責任を2004年に社長兼COO(最高執行責任者)に就任したグレゴリー氏に委譲していったという。
 こわもての風貌と早くから激しい国際競争の場に身を置いた経験から、社内でつけられたあだ名は「ゴリラ」。ファルド氏に対して、耳に痛いことを進言したり経営状態について質問したりできる者はいなかった。

 リーマンの破綻は、ファルド氏が1980年代の凋落から学んだ教訓と関係があるのかもしれない。
 80年代のリーマンの危機はトレーダー出身のファルド氏に大きな影響を与えたグラックスマンと投資銀行部門のピーターソンという2人の共同CEOの権力闘争がきっかけだった。グラックスマン氏がピーターソン氏をCEOの座から追いやったことでトレーディング部門と投資銀行部門の溝が深まる。その後会社は弱体化し、84年にアメリカン・エキスプレスに買収された。
 社内のいざこざが会社の独立性を奪い、収入の大幅減につながったという経験は社員たちのトラウマとなった。94年にアメリカン・エキスプレスから独立を果たしたときファルド氏は、先のCEOらと同じてつは踏まないと誓った。それは強力なナンバー2は必要ないということを意味していた。
 96年には長年の盟友だったペティットCOOを解雇。その後6年間、誰もCOOの座に据えることはなかった。さらに将来ライバルとなる可能性のある者たちを降格させて排除した。最終的にCOOに就任したのは、74年に入社しファルド氏の信頼を勝ち得ていたグレゴリー氏だった。彼に与えられた任務はただ一つ。余計な議論を行って、ファルド氏の負担を増やさないこと。
 当時の社員によると、グレゴリー氏との会議は、独白を聞かされる場だったという。それも身だしなみを整えろといった話題ばかり。経営会議でも議論は行われなかった。それはファルド氏が参加する執行委員会でも同じだった。2007年の予算について検討する場で、ある委員が業績について質問すると、ファルド氏はひとにらみし「わたしがそのような話題をきらっているのを知っていて、よく聞けるものだな」と言い放ったことが参加者からの証言で明らかになっている。

記事:Bloomberg
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